マンションの共有部分(配管など)からの漏水被害は、居住者にとって非常に深刻な問題です。通常、共有部分の不備による被害は、区分所有法や民法に基づき管理組合が責任を負うのが一般的ですが、ご質問の「高裁で組合側の責任が否定され、現在最高裁で争われている事案」は、これまでの実務慣行を揺るがす可能性のある重要なケースです。
この事案(福岡高裁 令和5年11月22日判決、現在上告中)の経緯と争点を整理して解説します。
1. 事案の概要と経緯
この裁判は、マンションの共有部分である「縦枝管(排水管)」からの漏水により、専有部分(部屋)に損害を受けた区分所有者が、管理組合に対して損害賠償を求めたものです。
経緯のタイムライン
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漏水の発生: 共有部分である排水管の腐食・破損により漏水が発生し、階下の専有部分に被害が出ました。
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一審(地方裁判所): 管理組合の責任を認め、賠償を命じる判決(従来の通説に近い判断)。
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二審(福岡高裁): **「管理組合に損害賠償責任はない」**として、一審判決を取り消し。
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現在: 原告(区分所有者)が判決を不服として最高裁判所に上訴中。
2. 福岡高裁が「責任なし」とした主な理由
なぜ高裁は、共有部分からの漏水であるにもかかわらず、管理組合の責任を否定したのでしょうか。そこには「工作物責任(民法717条)」の解釈が関わっています。
① 管理組合は「占有者」ではないという判断
民法717条では、工作物の管理に瑕疵(欠陥)があった場合、まずその工作物の「占有者」が責任を負い、占有者が注意を怠らなかったときは「所有者」が責任を負うとされています。
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高裁の論理: 管理組合はあくまで「管理業務を行う団体」であり、共有部分を直接的に支配・利用している**「占有者」や「所有者」そのものではない**と判断されました。
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実際の責任主体: 高裁は、共有部分の「所有者」は「区分所有者全員」であり、責任を問うなら(管理組合という組織ではなく)区分所有者全員に対して行うべきである、という趣旨の判断を示しました。
② 管理組合に「過失」がないという判断
管理組合が定期的に点検や清掃を行っていた場合、管理義務を尽くしていたとみなされ、不法行為(民法709条)上の責任も否定されました。
もしこの高裁判決が最高裁で維持された場合、今後のマンション管理に多大な影響を及ぼします。
| 項目 | 従来の考え方(実務) | 福岡高裁判決の影響 |
| 賠償の請求先 | 管理組合(またはその保険)が窓口となる。 | 管理組合に請求できず、全住民を被告とする必要が出る可能性。 |
| 保険の適用 | 個人賠償責任保険や特約でスムーズに処理。 | 責任主体が曖昧になり、保険金支払いに支障が出る懸念。 |
| 管理組合の役割 | 共有部分の瑕疵責任を負う主体。 | あくまで「事務代行機関」に過ぎないという位置付け。 |
結審した際にはその仔細を記載します。
実例ー組合内の損害賠償処理顛末
実は、管理物件中に共用部漏水による専有部損害の賠償を行った実例がある。天井、壁、床の浸水被害に加え、家財、さらには居住者本人の避難宿泊代も請求されるという規模だ。共用部保険は国名のつく大手保険会社だが、共用部による漏水被害は免責という役に立たない商品を販売していて、それをまんまと買ってしまっていた。こうなると問題は組合対組合員の構図で、損害賠償対象の妥当性から当事者間で決着しなければならない。外部の査定サービスを探したが無く、法律事務所に依頼しても断られた。組合対組合員といっても、組合員同士の争いであるから事はデリケートだ。処理の当事者としての課題をまとめると;
・加害者がいない被害であり、その損害賠償範囲は被害者の態度・性格によって一方的に歪む
・仲介者や仲介サービス(つまり法律事務所)を買わない限りは損害査定が難しい
・組合員同士、言い換えれば住民間の争いに発展しうる構図が処理を歪める
保険は充実させておきたい
上記の経験から言えることは、共用部保険の漏水損害対象保険部分を拡充することだ。共用部保険の支払いの大半が漏水がらみと推察され、保険会社は免責範囲を拡大している現状だ。
大手各社の共用部保険商品の現状について以下に記す;
(続く)
続報:最高裁判決ー組合責任
最高裁判決にて組合責任が改めて確認されました。以下、毎日新聞記事抜粋です。
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マンション共用部原因の漏水「管理組合に賠償責任」 最高裁が初判断
2026/1/22 15:12(最終更新 1/22 19:32)
分譲マンションの共用部分の不具合で区分所有者の部屋に漏水被害が起きた場合、マンション管理組合が賠償責任を負うかどうかが争われた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(岡正晶裁判長)は22日、「特段の事情がない限り、責任を負う」との初判断を示した。その上で、管理組合の賠償責任を否定した2審・東京高裁判決をいずれも破棄し、賠償額算定などのため、審理を高裁に差し戻した。
小法廷は、区分所有法が共用部分の管理に関し、管理組合など区分所有者の団体の集会決議を必要としていることから、共用部分は団体が管理して安全性を確保していくことが予定されていると指摘。管理組合は特段の事情がない限り、損害の発生を防止すべき地位にあり「占有者」と結論づけた。
原告は東京都練馬区と新宿区にあるマンションの区分所有者。外壁の亀裂など共用部分の不具合から漏水が起きたとして、部屋の補修費などで1人が約1400万円、もう1人が約670万円の賠償を管理組合に求めた
#マンション #共用部からの漏水 #管理組合の損害賠償責任 #訴訟

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