ポートフォリオマネジメントの歴史

  

~ ポートフォリオマネジメント理論の系譜 ~

 

欧米の大企業ではあたり前のように用いられているポートフォリオマネジメントであるが、こと日本においてはその動きが遅れている感がある。しかしながら、プロジェクトマネジメントをはじめ、欧米で普及したマネジメント手法が少し時間をおいて日本で活用されていくことは良くあるケースであり、グローバル化が進んでいく世の中の流れのなかで、今後ポートフォリオマネジメントが日本に広がっていくのは間違いない。そこで、欧米で近代ポートフォリオ理論がどのような経緯を経て広まって行ったかをまとめた。

 

近代おけるポートフォリオマネジメントは、1952年にポートフォリオ理論の父と言われ、ノーベル経済学賞を受賞し東京大学で教鞭を執ったこともあるHarry Markowitz が「Portfolio Selection」を執筆し、金融分野において効率的フロンティア(Efficient Frontier)を用いたリスクとリターンの特徴に数学的観点を取り入れた理論によって産声を上げた。1970年、ボストン・コンサルティング・グループによって、異なるプロダクトを市場成長率と相対市場占有率の2軸に配置させ、十分な利益を得る戦略が示され、いわゆるプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントが企業の経営戦略の分野に対して幅広くそのコンセプトが広まった。1970年代には研究開発分野への導入が始まり、1981年にMcFrarlanによってITプロジェクト選定とプロジェクト・ポートフォリオマネジメントの基礎となるコンセプトが紹介された。

 

1980年代中ごろから1990年代はじめにかけては、プロジェクト型の組織運営をしている企業での複数プロジェクトをマネジメントする手法として、プロジェクト・ポートフォリオマネジメントに関する研究がいくつか発表された。その後、2005年にPMIProject Management Institute)からThe Standard for Portfolio Management 2008年にOGCからManagement of Portfoliosがそれぞれポートフォリオマネジメントの標準書として発行され、体系的なマネジメント理論を説明する基本的なガイドラインとして版を重ねている。そして2015年にはISOthe International Organization of Standardization)からISO21504Project, programme and portfolio management – Guidance on portfolio management」が発行され、世界的な流れとしてポートフォリオマネジメントの体系的方法論の充実が図られている。

 

このような動きの中で、海外を主要な市場としている日本企業においては、欧米や新興国の国際企業と渡り合っていく必要があり、グローバル・スタンダードであるポートフォリオマネジメントに関する体系的な方法論を理解し、企業経営の中で活用することが基本的な要件となる。